歯科検診に定期的に通うべき、とは聞くけど、
「定期歯科検診なんてわざわざお金を払ってまで行かないよ…」
「定期的に歯科検診に時間をとられるのはちょっと…」
というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?
しかし、歯科検診を定期的に受けることは、歯や身体を健康に保つためにとても重要です。
今回は、定期歯科検診に通うメリットと、実際の定期歯科検診の流れについて、お話ししていきます。
歯科検診はお金と時間がかかるイメージ
歯科検診に通わない理由を聞いてみると
「どこも悪くないのに、検診のためにお金と時間をかけるのは…」
という方が多いです。
病院というのは、どこかが悪くなってから行くことが多いので、そう思う気持ちはとても分かります。
短期的に見ると、効果を感じられないことにお金や時間を費やしたくは無いですよね。
しかし、実は長期的に見ると、定期歯科検診に通っている方が、費用が安く済みますし、時間もとられないのです。
この理由をお話ししながら、定期歯科検診に通うメリットを紹介していきます。
どうして、歯科検診に通うべきなの?
ー定期歯科検診に通うメリット
・健康寿命が伸びる
健康寿命とは、厚生労働省によると、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを指します。
実は、歯を健康に維持することは、この健康寿命を伸ばすことに繋がるのです。
歯を失う原因の7割は、むし歯と歯周病です。
このむし歯や歯周病に気づくのが遅れてしまうと、歯がボロボロになってしまったり、抜歯を余儀なくされたりして、自分の歯が無くなってしまいます。そうなると、毎日生活する中で、
・歯がボロボロで満足に食事ができない
・歯が無くなって、上手く人と話せない
・口臭が気になって、上手く笑えない
など、辛いことがたくさんでてきてしまいます。
また、近年、国内外の研究で、口の病気が全身の病気に関係することが分かってきました。
高齢者において歯の欠損がたんぱく質、カルシウム、ビタミン類、野菜類、肉類の摂取低下につながることや、野菜類などの噛みにくい食品を避け、デンプン類が豊富な食品を好むようになると報告されています。
栄養バランスが崩れると生活習慣病を引き起こすだけでなく、免疫力や認知機能にも悪影響を与えるといわれています。さらに低栄養状態になると筋力が低下し、そこから寝たきりや要介護に繋がることが分かっています。
定期検診では、むし歯や歯周病のチェックや予防を行います。
定期検診が義務化され、国民の約9割が受診しているスウェーデンでは、80歳の時の残存歯数が平均21本であるのに対し、日本では12本しかありません。
定期的にしっかりとメンテナンスを行っておくことで、80歳になっても自分の歯でしっかりと生活でき、健康寿命も長くなるのです。
・むし歯・歯周病の早期発見と予防
先にも述べたように、歯を失う原因の7割は、むし歯と歯周病です。
定期検診では、むし歯や歯周病のチェックや予防を行います。
毎日の歯磨きだけでは落とせない汚れや細かい部分の磨き残しは、むし歯や歯周病を引き起こします。
口の中の病気は、最初の頃は自覚症状が無いことが多いです。
症状を自覚した頃には、大きく進行していて、歯を大きく削る必要があったり、なかなか治りにくい状態まで進んでいたりというケースが多いです。最悪の場合、抜歯が必要になってしまうことも考えられます。
そうなってしまうと、治療に多額の費用がかかるため、定期検診に行っていた方がお得だった、なんてこともありますし、通院回数や治療期間も定期検診の方が少なくて済みます。
何より、歯の痛みはあなたにとって、とても負担に感じることでしょう。
定期的に通うことで、むし歯や歯周病の発見が早くなり、重症化を防ぐことができます。
・医療費と時間を節約することができる
ある調査では、定期検診を年に2回以上受けている人は、高齢になるほど年間医療費の負担が軽くなり、65歳では平均より15万円も安くなるというデータがあります。
また、「3か月に1回定期検診に通っている方」と「歯が痛くなったり、腫れたりしてから通院する方」の医療費を比較すると、80歳までで、約3倍もの差(金額にすると284万円)が生まれてしまう、というデータもあります。
時間の面でも、定期歯科検診は1回30分〜1時間ほどです。実際に治療が必要になってしまうと、通院の回数が増えたり、治療期間が長くなったりと、かえって多くの時間がとられてしまいます。
ですから、定期的に歯科検診に通っておくことで、長期的な医療費や時間を節約することができるのです。
このように、定期検診でむし歯や歯周病をチェック・予防することで金銭的・時間的負担が軽くなり、なおかつ身体を健康に保つことができるのです。
定期歯科検診で行う内容・流れ
ここまで、定期歯科検診に通うメリットをお話ししてきました。
それでは実際の定期検診ではどんなことが行われるのでしょうか?
具体的な流れをご紹介します。
①むし歯のチェック
むし歯が無いか、また一度治療したむし歯が再発していないか、をチェックします。
②歯茎のチェック
歯茎が腫れていたり、歯周ポケットが深くなっていたりと、歯肉炎や歯周病になっていないかをチェックします。
③ブラッシングの指導
歯並びや歯の形によって、適切な歯の磨き方は人それぞれです。一人一人に合ったブラッシングの仕方を教えます。
④歯垢のチェック
歯垢(プラーク)はむし歯や歯周病の原因となります。歯垢を染め出して、歯垢が付きやすいところをチェックすることもあります。
⑤歯垢の除去
日々の歯磨きで取りきれない歯垢を取り除きます。
⑥歯石の除去
歯垢が時間が経って硬くなると、歯石になります。これも歯周病の原因となり、歯磨きで取り除くことはできないので、専用の機器で取り除きます。
⑦歯科相談
歯科医師や歯科衛生士がむし歯や歯周病、その他のお口周りの悩み事の相談に乗ります。不安なことは気軽に相談しましょう。
⑧粘膜のチェック
口内炎など、お口の中の粘膜に異常がある場合、お口周り以外の病気の可能性もあります。歯科検診では粘膜の状態もチェックします。
⑨レントゲン撮影
年に一回は、歯の根っこや骨の状態などを確認するためにレントゲン撮影を行うことが多いです。
まとめ
今回は、定期歯科検診に通うメリットと実際の流れについてお話ししました。
定期歯科検診は、お子さんや大人は3〜6か月に1回、高齢者は1〜2か月に1回程度通うことをおすすめします。
また、定期歯科検診だけでなく、日々のセルフケアも重要です。
日頃からお口周りを清潔に保って、その状態を定期的に歯医者さんにチェックしてもらいましょう。
記事執筆者
廣瀬哲人
株式会社ENロジカル代表
京都大学医学部医学研究科在学中に脳神経の形成機構の研究に従事。
在学中に起業し、事業売却を経験。
自身もwebのディレクターとして従事し、経営する会社ではいくつものwebメディアを運営している。
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記事監修者
歯科医師/岡本孝博
高知県の僻地出身
高校卒業後、アパレル業界へ。デザイナーを経験後、歯科医師になる。
2008年より、京都大学医学部附属病院に勤務。基幹病院病棟医長/外来医長、地域基幹病院歯科口腔外科の所属長、地域医療連携における部門部長、難治性外来非常勤医師を務める。また、研修指導医取得はじめ数々の認定医資格を取得
2018年に㈱スクリエを創業
共同記事監修者
管理栄養士/西岡愛梨
管理栄養士として大手医療法人の病院や介護老人保健施設に勤務しながら、大阪市立大学大学院へ進学。当時の研究テーマで日本病態栄養学会の若手研究特別賞を受賞した過去をもつ。現在は後期博士課程に在籍しながら、京都大学や地域中核病院での研究調査に携わっている。